第五十六回 お内仏の荘厳(前卓五)


前回には、下地になる漆の話をさせていただきました。今回はそう、上に貼る金箔(写真上)の話です。
この金ですが、もともと高価なものですが、現在ではより高くなっております。グラムにして25000から30000円でしょうか。ひと昔前に比べまして、手に入りにくくなったものです。
本願寺のお内仏は「金仏壇」と呼ばれています。白木の部分がなく、漆をアクセントにして、金箔仕様だからです。
この前卓もそうなのですが、箔一色で、その箔が一番、多く使われているのは横壁です。中をのぞいたときの側面の部分です。
金箔は、金本体を、ものすごく薄く広く伸ばして作ります。ゼロミクロンとかいう単位です。
金、一グラムで取れる金箔は平均5200㎠(平方センチ)と言われています。縦72cm よこ72cmぐらいですか。幅1間(いっけん)、約180センチの仏間があるとします。1間ぎりぎりに納めますと、扉を開くことができませんので、余白を入れて120センチぐらいと仮定しましょう。だいたい、そのときのお内仏の片側側面の表面積ぐらいにあたります。
側面二カ所の原価だけで、現在の金二グラム以上になっているわけです。とはいっても、このように薄くなったものを復元させることは至難の業です。「金は永遠」と言われますように、物理的現象を無視して戻したら、その価値になります。しかし、それは不可能に近いでしょう。
ある金箔が貼ってある壁があります。はがすことはできますが、わずかな風で、それが、すべて吹き飛びます。本当にわずかな風です。ですから、金を逃さないためには、はがす仕事を無風なカプセルのような場所に入って行うのが絶対です。ということで、普通の環境で金箔をはがしても、どれぐらい残るものなのでしょうか? 貼るときも神経を使います。72㎠のものを持ちあるくことはできませんので。持ち運びしやすいように、分けておきます。百枚に分割して7.2㎠が目安でしょうか。
それを専門ピンセットに挟み、呼吸をしないで貼ります。息を吐いたら吹き飛ぶ可能性がありますから、それほど、うすいものなのです。
その箔を漆を糊の代わりにして、貼っていくのです。今回の写真に金箔は柱の一部分を載せておきます。細かくよく見ると境界のように、色が違っているところがあります。この、わずかな違いは光の加減ではありません。その金箔の合わせ目です。わかりやすい場所を選んだつもりですが、相手もプロの仕事ですし、月日もたって落ち着いてきましたので。
この箔ですが、金箔以外にもつくれます。めったにお目にかかることはありませんが銀、銅からも作れます。
色目調整のために、金にほんの、わずかだけ入れるという場合もあります。そういうことで、代用として、真鍮(しんちゅう)箔も存在します。
しかし、真鍮箔はいくら、安価でも普通は仏具には使いません。劣化スピードが、ものすごく速いからです。真鍮は以前にも説明をしましたが、銅と亜鉛(あえん)の合金で、その仕様により金色に輝いておりますが、金との大きな違いがあります。今後、三具足のときに改めて説明をいたしますが、まずは、次からの言葉をお留め置きください。
銅は空気に触れると酸化して黒ずむ性質があります。その上に、薄くなったことで表面積も広がるのですから、あっというまに変色が現れます。貼ったら即、厳重なコーティングをしなければなりません。それも効力がなくなったら、すぐに、黒ずみますので、きちんと見極めないと。その様な手間や理由で、普通は真鍮箔をすることはないのですが、金価格がここまで、高くなってくるとどうでしょう。もしかしたら、という言葉がありますから。皆さま方も、今後、お内仏を買われるときがありましたら、ご注意願います。
このように、本金箔、代用金箔は、まったく別な物ですので、ちゃんぽんにした金箔は存在しません。製造上、不可能ということです。ただ、これは、金箔全般にいえることですが、先程、言及したように、色目をわざと変えるための細かい調合はあるみたいです。
今、真鍮箔のお話をしましたが、箔が用いられるのは、白木に漆を塗り、その漆を下地に貼る場合です。実は前卓が金色の場合は、それだけではありません。エナメル金塗料をぬってあるのも存在します。寺院用と違って、お内仏の前卓は幅20cmから30cmぐらいですので、再生を考えずに塗られたのでしょう。でも、悪いことばかりではないですよ。ごしごし手で拭いても、まずは塗料が落ちませんから。
特徴は分厚いという感じで、ことさら光っているところです。この塗料を使っている場所は仏具に存在します。繰出し位牌をご存じでしょうか。亡くなられた方の法名が書かれた小さな木の板を納める場所です。そこの扉は手で開けたり閉めたりするので、劣化が激しくなります。ですから、どれだけ使われてもはがれないように金の塗料が使ってあることが多いです。
イメージとしては折り紙の金色です。黄金色でテカテカして顔が写るものがあります。実際、皆様方の中にも、小さい頃は、この折紙金こそが金の色だと思った方もいるでしょう。実はまったく金関係のものは、入っていません。では、なぜ金色に見えるのでしょうか? それは、銀色で光るアルミ箔の上に、黄色の塗料がぬってあるセロファンを科学的に貼り付けてあるからです。
卓に塗ってある塗料の原質もそうです。アルミ粉を使った鏡面仕様の銀色をベースにクリアイエローを混ぜるのです。プラモデルをたしなんでいる方は、理解できると思いますが。
今プラモの話が出てきましたが、実際のところプラ成型の前卓も登場してきました。たとえ落としても、部品が取れるとかありませんから、いいかもしれませんね。「寺がプラスチックを認めるとは何事だ!」という声が聞こえてきそうですが、時代の流れというのも大切です。注:本尊は本山の木仏点検がおりません。
ひと昔前はお墓が、そうでしたが。雪の深い北陸では墓の維持が難しいということで納骨堂が誕生しました。納骨堂に最近ではお位牌を入れられる方が多くなりました。お内仏を置くのを止めたり、最初から買わない方が増えたからでしょうか。その納骨堂も木造からアルミ形式が主流になりました。
このように、どんどん仏具は近代化しております。教団の方も実は、簡易的な仏具の普及には前向きなのです。今回は、ここまでにしておきますが、続きは次回にさせていただきます。
もう一枚の写真は金沢で買ってきたお土産用金箔です。

