第五十三回 お内仏の荘厳(前卓二)

今回は基本的な前卓から入ります。御覧の通り一般の前卓は、このように飛び出た台座の上に乗っているのが普通です。ですから、前回の写真の阿弥陀堂型前卓とは、まったく違う雰囲気となります。
阿弥陀堂型の前卓は、仏壇の下部すべて占領をしているような形ですが。お内仏といえば、この御影堂(大師堂)型前卓が主流です。一般に前卓はこちらの方を指します。
さて、過去に隠し引き出しや、隠し倉庫が存在すると説明をしましたが、その意味、わかりましたでしょうか。
この写真をよく見てください、怪しいところばかりですね。ですが、親から何も知らされずにお内仏を相続された方の大半は、これらの隠し場所に気が付きません。
私から見れば、とても不思議な現象なのですが、よく警官が一目で怪しい人物を見ればわかると、言いますがそのような感じでしょうか。
なぜ、このようなことを強調するかと言いますと、よく見てください。この前卓、三つの部分に分かれています。一番体積を占めるのは本体です。よく見ますと、上に薄い板が二枚見えます。これは下水板(げすいた)とよばれるものです。下水板につきましては過去に説明をしたので、そちらを参照願います。
前回の阿弥陀堂型前卓も三つの部分に分かれています。どちらにしても、この三つ部分の前卓が正式です。また上の方の板の両端は、角のような形になっております。この角のようなものを筆返し(ふでがえしと)と呼んでおります。のちの機会に説明をしますが、前卓の上にはこのように二枚の下水板が乗っていることが大切です。ですが、二枚目のうすい板がないお内仏の前卓は、いかような経緯でそのような形になりましたかわかりませんが、結構多いです。
さて、下水板の説明も一応終わりましたので、今回の本題に入ります。実は、この板、裏と表が逆になったのをよく見るのです。両面金箔でしたら、金具がついている、ついていないの違いですから、間違えても無理はないですが、裏が塗ってない下水板は真っ黒です。何と驚いたことに、正面真っ黒の、薄さこそ五ミリぐらいですが、幅約二十センチから五十センチのものが目の前にあっても気が付かないのです。
私はまったく理解ができませんが指摘されても、気が付かない人もいます。手で触れて初めてわかるといいますか、このギャップ、どうして出てくるのでしょうか?
正面で、すぐに目が付くところが真っ黒なものですよ。これが警官と一般人の目の違いといえば、それまでですが、毎日見ていて。あからさまに違っていても気が付かないなんて、これ以上、愚痴を言っても仕方がありませんが、これが現実です。
結局、先月打敷(うちしき)をはずしたとき、うっかりしていた。すこし、ひどいかたは、去年のお盆のときに使って、そのあと、はずして元に戻したけど、お寺さんが祥月にくるまで裏側に気が付かなかったということがあるのです。法事の後に打敷を外して、次の法事のときまで気が付かなかったという、笑えない家庭もあります。
打敷というのは荘厳の代表格ともいえるものです。以前に提示した本山からの小冊子に記載がされています。この打敷は日頃には用いません。年忌法要、そして、お正月、彼岸、お盆、おとりこしなど、もし、祥月命日(しょうつきめいにち)にお寺さんに来ていただく場合にもかけるものです。この打敷をかけるのは荘厳の基本です。
さて、二番目の問題です。この見本の写真、ガラスが見えますね。このガラス、話を聞いてみると、ろうのたれ、線香を落とした時の火事の予防や、お花の水をこぼした時、前卓の金箔に水がかからない予防ためです。すべてのお内仏に、あるわけではありませんが、今回のお話上、用意をされているお内仏の写真を撮らさせていただきました。よくあるミスというのは、もう文脈から、お察しの通り、このガラスをふたがわりにして打敷をかけることです。結構、そのようなことあるのです。筆返しの上に打敷が乗るのですから、まず見た目が、両端ふくれあがって、ごわっとした感じになります。これ、物理的に押さえているから、本当によくない状況なのです。法事のときにも見かけますから。ある日、職務的責任から、直そうとしました。その時、とんでもないことが起きました。燭台を取って、花瓶を取りました。すると打敷が暴れだして、ガラス(プラスチック板かも)が浮き、残った中央の土香炉を落としたのです。さすがにびっくりしました。ケースによっては、このようなことも起きてしまうのだと、あれから、絶対に香炉から先に取ろうと思いました。そして、門徒様にも指示をしています。今、体験談をしましたように、言葉はよくありませんが、年季の入った、くたびれた打敷なら、そのようなことは起きませんが、新しいものだと無理やりに押さえつけられているため反発力が大きくなり、このような可能性がでてくるのです。見本のお内仏は、ガラスですが中には塩化ビニール、プラスチックで同じような役割をしているところもあります。お内仏をきれいにするという気持ちに賛同して、悪いことではないのですが、この打敷をかける場合は本当に注意をしてもらいたいです。あの時は、本当に特殊な出来事だったかもしれませんが、押さえつけられたものが解放されると反発力が発生するという、物理的現象がおきますので。
少し、いやみっぽいことを書きますが、このように前卓のことをあまり気にしない家庭では、このお内仏の仕掛けに永久に気が付かないことも多いでしょう。
さて、クイズです。この写真のお内仏、引き出し、仏庫はいくつあるでしょうか?
答えは、どちらも二カ所です。左右が二段に見えますが、実は一カ所づつなのです。わざわざ上下二段に見えるように作るのですね。隠し箱らしく目をくらますように。大きな空間になりますから、仏具なら、たいていなものが収納できます。
また、今は注目して数えた人たちも多いと存じますが、普段、何気なく見ていたら、本当に仏庫の存在に気が付かれたのでしょうか。これも、笑い話ではありませんが、だいぶ昔になりますが、大きな家での法要で、形式を重んじるときに、真ん中の御文箱を取り出したことがありました。すると、本来はお文(おふみ)が入っている場所に、貯金通帳、株券、そのようなものが入っていました。本当にびっくりして、お互いがばつが悪い思いをしました。あれから、必ずご門徒さんに休憩中、取り出してもらうのですが、ご本山からの法名、よその宗派からのお札、御朱印等が出てきた場合もございます。ということで、一度確認をされ方がよろしいかとぞんじます。
仏庫は以前にも説明をしましたように、お供笥を入れてください。もし、もう一つの鶴の燭台、花瓶がありましたら、ぜひ、そちらも、この仏庫に入れておいたほうがいいです。いずれ近いうちに、燭台のお話をしますので、よろしくお願いします。

