第一回 欄間(其の一)

 なぜ、欄間を最初に持ってきたかと申しますと、参詣の皆様方から質問があったからです。それは、「この上に並んでいらっしゃる仏さんの彫物に何か意味があるのではないか?」という質問でした。
 その話の前に、軽い概略を、お寺の本堂は、大間、外陣、内陣、余間という四つの場所に別れています。
 まずは大間、参詣の方々が参る場所です。本堂では一番広く、中に入ってすぐにあるところ、そこが大間です。 当寺は五十六畳あります。
 次に外陣、畳が一枚分高くなっているところです。当寺は用いておりませんが「矢来」という名の柵のようなもので隔てられているところもあります。ここに座られる僧侶は外陣方と呼ばれます。
 その次に内陣 、余間、これらは、また一段と高くなっており、僧侶が儀式を執行する場所となります。おごそかな雰囲気の場所です。
 中央部分の内陣には本尊の阿弥陀如来を筆頭に、両脇には、それぞれ親鸞聖人、蓮如上人(お寺によっては先代住職の像)が鎮座されております。
 皆様方の家の御内仏は、この内陣を小さくした形ですね。当寺も、この内陣だけは浄土を具現するように、すべて金箔で荘厳しております。
 最後に余間、右余間と左余間に別れております。余間というのは、浄土と皆様の間を結ぶ場所という感じでしょうか。僧侶たちは、外陣へは、そこをまたいで行き来しています。(内陣をまたぐことは不敬で絶対厳禁な行動だとされています)
 また、この余間は、お寺によっては、法要の時、僧侶ではない檀家の役員などに座っていただく場所であります。
 さて、肝心な欄間の話について説明をしないといけませんね。 真宗では内陣上の三面には、天人の彫り物を用います。なぜ天人かと、それはむろん、極楽浄土を現すためです。たいていの方々は極楽といえば、天人がいる世界を想像するでしょう。
 天人のデザインは決まっておらず、お寺によって違います。大抵は一面に二人なのですが、一人のところもあれば、中には大勢のところもあります。
 ある程度の大きさのお内仏にも彫られていますので、もしかしたら皆様方もご家庭で、その天人のお姿がおがめるかもしれません。
 では、ここからは当寺の欄間を使って説明をしましょう。
 当寺の欄間は七面あります。まずは、正面の彫り物ですが、写真の通り二人の天人がおり、左側の天人が合掌をし、右側の天人が手に何かを添えています。それは、蓮華型香炉です。
 香炉というのは、焼香するときに香をくべる容器です。皆様の御内仏にもあります。
 焼香をすることは、礼拝の第一歩です。清らかな香りが導く世界は悩み苦しむものに安らかな心を与え、問題に立ち向かう勇気を与えるのです。
 合掌の姿は、自分の目の前にいる人を尊敬し感謝をする姿であり、本当に大切にしなくてはならないものに出会った姿です。
 次に蓮華の話に移りたいと思います
 極楽浄土には花が咲いています。そして、その花は、ほとんどの場合、蓮で具現されております。蓮徳寺の蓮ですね。
 皆様もお釈迦様の絵や像をご覧になったことはあるでしょう。お釈迦様は、蓮の台座の上に、立ったり座しておられます。我が浄土真宗の本尊である阿弥陀様も緑色の蓮華台の上に立っておられます。
 なぜ、蓮の花なのでしょうか? 蓮の花は、高原の陽がよくあたる咲きやすいところに咲くのではなく、湿地帯のような厳しい環境の場所に咲く花です。お釈迦様の教えは悩み苦しむ人間のところに花を咲かせる(救う)ことなのです。
 最後に話をまとめますと、正面の欄間は、仏様をお迎えするには、最初に香を炊き(焼香)、そのあと、手を合わす(合掌)をすることが必要だと教えているのです。

 親鸞聖人上の二面目、蓮如上人上の三面目も同じく天人が蓮の花を持っています。その説明は次回にいたしましょう。