第五十回 お内仏の荘厳(お華束三)


 今回は、お華束をお供えする(供笥の配置)場所について説明をしようと思っております。
 まずは、混乱をしないように、供笥とお華束の表現方法の違いについて、二点確認をしておきましょう。
 供笥は器(うつわ)単体の名称です。お華束というのは、供笥に盛ってある餅や団子の名称です。
 もう一点は、お仏供をお備えする、という文脈のときは、「備」という字を、お華束をお供えする、というときは、「供」の字を、できるだけ使わせていただいております。
 理由は、本山のお給仕のパンフレットの表現方法が、そのようになっているからです。

 では、改めて、お華束の説明に入らせていただきます。お華束は通常のときには、お内仏にお供えをしません。お正月、お彼岸、お盆、おとりこし、そして、その家の亡くなられた方の年忌法要(法事)のときに用います。
 ここで、大切なことは、お華束はお仏共(おぶく)の代わりではありません。お仏供を備えてあっても、前述のときには、お供えをしてください。
 次に供笥の話をさせていただきます。供笥は一対が一組となっております。
 理由は、おとりこし、寺では報恩講、御遠忌(ごえんき)に用いる一対の蓮水の絵柄が違っている供笥を基本にしているからです。この、おとりこし用の供笥については、二ヶ月前に説明をさせていただきました。
 説明が遅れましたが、お寺が所持している供笥は、金箔に蓮水が描かれた供笥だけではありません。別の色づけの供笥もあります。
 葬式用に銀も存在しますが、一般法要に用いるのは、ただの白木です。三方(さんぼう)の八角形版という感じでしょうか。
※一般法要というのは、正月の修正会(しゅうしょうえ)、彼岸会(ひがんえ)、灌仏会(かんぶつえ)、お盆である歓喜会(かんぎえ)、納骨法要、永代経(えいたいきょう)のことです。
 ですが、供笥は普段には用いないものですから、お内仏に二種類となりますと、維持が面倒です。そのため、お内仏の供笥の九割九分は、両方に使えるような形になっております。蓮水が描かれていない金地(こんじ)の供笥です。
 それでも、以前に紹介をしましたように、持っている家は持っておられますので、心に留めておいてください。

 では、配置について説明をさせていただきます。写真(上)は2012年まで本山から出されていた、お給仕の本の表紙と、あるページ(写真中)です。⑨上卓(うわじょく)の両側に、⑥供笥が飾られています。この場所に配置します。
 説明には、本尊の阿弥陀様も仏壇のたぐいものっておりませんが、供笥の配置してある場所は、お内仏の須弥壇の前部に当たります。
 お華束もお仏供と同じように、両尊が九字・十字の名号の場合は供える必要はありません。
 ただ尾張地方の場合、お脇掛が親鸞聖人・蓮如上人のところが主ですので、二対用意されている、お内仏も結構あります。その場合は、どこに置くかと申しますと、正式には決まっておりません。ですが、供えてはいけない場所はあります。親鸞聖人・蓮如上人の絵像の前です
 なぜなら、その場所は、お仏供を備える場所だからです。
 お内仏の両脇は、繰り出し位牌を置いたり、場合によっては遺骨も置けるように二段、三段という形になっておりますので、そこの、どこかに置いてもらえればよろしいです。

 お盆だけに、お参りをしている家庭に、このようなところがありました。どういう家かと申しますと、お内仏の三尊前に、団子を盛ったお華束が供えてあったのです。
 絵像の阿弥陀さまに一つ、親鸞聖人の前に一つ、蓮如聖人の前に一つでした。ですが、そこは、本来ならお仏供を備える場所です。
 その御門徒様の言葉では、「前から供えていて、最初から三つしかない」ということでしたが、そのようなことは、決してありません。お内仏は、祖父、もしくは、その上の代の方が購入したということですので、その間に一つ壊れてしまったのでしょう。
 昔は、ほぼ木製ですし、供笥は分解するとわかるのですが、側面は、薄い木の板に八分割をするように折り目を入れ、それを八角形の形にして、巻きつけるように、つなぎ合わせております。
 つなぎ目は上から金箔を貼りますのでわかりません。
 その上、穴もあいてますので、ある程度の物理的な力が加わると、ひしゃげることもあります。
 そのあと、補充をしなかったと思いますので、三つしかなかったのでしょう。

 一家庭の話になってしまいましたが、最近の方は、程度の違いがありましても、供笥の存在を理解しておられる方は少なくなっております。
 よくされる質問に「法事の時、お内仏を、どのようにすればいいですか?」があります。
 そのときは、まず「打敷(うちしき)をかけます、そして、お餅をのせたお供笥を供えます」と答えています。
 打敷までは理解ができるようなのですが、供笥については「八角形をしています、見たことありませんか」と言ってもピンときません。よくて、「そう言えば見たなあ」という返事です。一昔前は、このようなことがなかったのですけど・・ 結局、「どこかに、閉まわれているのでしょう」ということになって、おしまいです。
 つきあいが深い家ですと、一緒に、お内仏の中を探すこともあります。そのとき、だいたい、見つかる場所は決まっています。お内仏の左右に用意された収納庫です。そこを開けると入っています。
 この収納庫、取手がついていませんので、一見では気がつきません。飾りも付いておりますので、最初から収納庫と教えられていませんと、ただの飾り壁と勘違いをされる方が多いようです。
 実際、捜された、ほとんどの方が「この場所が、開くなんて知らなかった」と言っておられました。
 結局のところ、昔に比べて門徒の皆様方が、お内仏のことがわからなくなっているからこそ、これからのお寺は、そこのところを踏まえて説明をしていく必要があると思います。私もそのようなことを感じたからこそ、この功徳荘厳のコーナーを持たせていただきました。今回も、とりとめない文章でしたが、少しでも参考になってもらえるとありがたいです。

 本山の本に目を通していましたら、須弥盛(しゅみもり)の説明が載っていましたので、写真の三枚目に付け加えさせていただきました。
 お内仏に、お華束が供えてある写真も、機会がありましたら、のせさせていただく予定です。