第三十二回 お内仏の荘厳(二)

 前回、お内仏の話をさせていただきました。皆様方も身近なお内仏の方に、興味があったみたいで、色々と尋ねられることがありました。

 ご存じと思いますが、お内仏というのは、寺の本堂の内陣を基本としております。
 そして、それを、徐々に略していって、様々な形式のお内仏が存在するのです。大きく分けると、
 ①宮殿造り(くうでんづくり)
 ②宮殿御坊造り(くうでんごぼうづくり)
 ③(通)屋根造り(とおりやねづくり)
 ④平造り(ひらづくり)

 あとは、その番号の中間に、様々なバリエーション(地方によっても違う)が存在しますので、細かく分けると何十種類になります。
 ①宮殿造りと②宮殿御坊は、ほぼ型が決まっていますので、中間ものは少ないですが、これらの造りのお内仏は、開き方によっても種類が分かれています。
 三方開き(本三方)、柱開き(小口三方)、前開きの三種類です。

 宮殿というのは、本尊の阿弥陀様が安置されているところで、①番の宮殿造というのは、寺の宮殿そのものをミニチェア化して、中央に納めたものです。そして、その左右に両尊をかざっております。
 宮殿造の特徴は正方形です。皆様方は仏壇は、すべて長方形と思っておられると思いますが、宮殿造は、上から見ると完全な正方形です。
 つまり、お寺の内陣は正方形が基本ということです。
 寺の本尊である阿弥陀様の位置は、まさに、正方形の中央ということです。
 寺の内陣は、先月、説明をしたとおり浄土を模したものです。その前後左右の中央ということですから、阿弥陀様の役割もおわかりでしょう。まさに、阿弥陀様の世界ということなのです。

 写真(上)は某門徒家のお内仏です。
 正面が、その宮殿で、右側が十字名号、左側が九字名号です。もう少し、上等になりますと、親鸞聖人の厨子(ずし)をミニチャア化したものが納められていることが御座います。左側は蓮如上人となります。
 宮殿造のお内仏は、正方形ですので、一苦労することになります。毎朝、お給仕(お仏飯(おぶっぱん)をお供え)をしようとしても、奥の両尊までは手が届かないのです。
 そのために、お内仏の横壁の板を取り、代わりに、開閉ができる鎧戸(よろいど)金障子(きんしょうじ)が入っているのです。小口三方は、途中の中柱までが同様に鎧戸、金障子となっております。
 金障子というのは、お内仏を閉める内側の扉です。漆と金箔仕様ですので金障子と言います。
 鎧戸は、完全に閉じるときの外側の扉です。雨戸のようなものだと思ってもらえればわかりやすいです。
 横から手を入れる、すきまがないといけませんので、仏間は大きく場所をとることになります。小口三方でも、最低、一間半(約135センチ)の間口をとらなければなりません。
 写真(下)は、本三方側面の鎧戸です、奥まで給仕ができるように、小さな扉があるのが、おわかりでしょう。
 たまに、無理矢理、すきまなしの仏間に押し込められている小口三方の、お内仏を見ますが、よく知らずに、家を改築したのでしょう。今更、どうにもなりませんが、残念なことです。

 実際、宮殿造りの、お内仏は大きくなります。50代ぐらいのサイズから御座いますが、50代でも幅は四尺(約120センチ)は必要です。天井は、やはり、壇を略すことをしない場合は、二メートルは必要です。
 実は写真の家のお内仏は、下の段が、かなり略されている(正式の三分の一ぐらい)のです。
 今、50代という表現をしました。これは、お内仏に納める軸のサイズのことです。本山仕様では、縦31.5cm、横14.3cmの大きさです。
 よく、「うちの仏壇は、お二百とか」、言われますが、それは、軸のサイズをさしまして、決して仏壇の大きさをあらわすものではありません
 もし、そう思っていたら大きな勘違いですので、頭の中で訂正しておいてください。(来月に、詳しい説明をする予定です)

 では、ここで、その、お軸の話に入らせてもらいます。実際、この、お軸の方が大切ですので。
 お内仏の本尊は、阿弥陀様の絵像の、お軸が一般(九割以上)です。絵像には中央の阿弥陀様を中心に四十八本の光が描かれています。四十八本は四十八願、本願をあらわします。本願寺のいわれ、そのものです。
 その四十八本の後光ですが、東本願寺、大谷派は上部に描かれている光は六本です。ちなみに、西本願寺の方は八本です。
 さて、この本尊ですが、正式なものは、軸の裏に本山から受けた証の印が押されております。たまに、仏壇屋から購入すると、印のないものがありますので、その場合は本山の認めがないということになります。ですから、新たにお内仏を購入されるときは、そこのところを仏壇屋に確かめられることを推奨します。教務所(本山の出張所)での購入は間違いありませんが、遠いことも御座いますので、もし、お付き合いをしている寺がありましたら、その寺に購入を頼んでもよろしいでしょう。

 最近、木像の阿弥陀様が増えてきました。ですが、それは、よくありません。では、「なぜ、寺は持っているのに、私たちはダメなんだ。寺だけが特別なのか」と文句が聞こえてきそうなのですが、大きな理由があるからです。
 寺の本尊は、本山からの刻印が裏に押されております。つまり、刻印がない阿弥陀様は、本尊ではなく、ただの阿弥陀像ということになります。
 絵像は本山から購入できますが、木像は、一切、本山から出しておりません。だからといって、永久に本尊にならないわけでは御座いません。市販品の木像を、本山に本尊と認めてもらうため『木仏点検』を申請します。そこで、しかるべき冥加金を支払えば、刻印を押してくれます。気になりましたら、京都御本山か、お近づきのお寺様に相談すればよろしいかと思います。(検定ですので、出したから、すべて通るとはかぎりませんので、そこもご注意を)
 あと、現代では、プラスチック、PVC、ポリストーンなどの、新素材の阿弥陀様も存在すると聞きますが、これから、どうなるのでしょう。

 今回は、ここまでしか説明ができませんでしたが、続きは次回に回させていただきたいと思います。